逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 肩先までぴったりに仕上がった、フルオーダーの上品なネイビーのスーツが、雨を吸い込んでべったりと張り付き重くなっている。
 
 基の正面にまわりこみ、ボタンに手をかけて上着を脱がせ、さらにベストのボタンを外した。


「さ、や……じ、ぶ、んで……」


 えんじ色のネクタイを外し、今度はシャツを脱がせようとボタンに手をかけると、そこで初めて基が抵抗らしい抵抗を見せた。

 だが声を出すのもやっとの基に、シャツの小さなボタンが外せるわけがないのだ。


「……気にしないで。私も気にしないから」


 沙耶はそれだけ言って、シャツのボタンを下から順に外していく。

 だが、たくましい腹筋から広い胸の筋肉があらわになるにつれて、沙耶は自分の顔に血が集まるのがわかった。


 当然だ。大人の男の裸など生まれて初めて見るのである。


(気にしないから……気にしない……って、やっぱり気になる……!)



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