逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 彼がこのエール化粧品の常務であることはわかったが、だからと言って彼のために歌を歌うなどあってはならないことだ。

 沙耶はじりっと一歩引いて、頭をさげる。


「それは私の仕事ではありませんので。失礼します」


 急いでカードを引き、常務室を飛び出した。


「……小鳥に逃げられたな」


 基は空のグラスをくるくると回しながら、ニヤリと笑う。


「だが、志倉沙耶か……」


 もし場面を神尾が見ていたなら、基のお遊びを止めることができたのかもしれない。

 けれどこの場に優秀な秘書はいなかった。残念ながら……。




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