逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

「君にキスしたい……髪に。頰に、まぶたにも。安らかに眠れるように、祈りを込めて……」


 思わず本音が漏れたところで、
「ダッ……ダメ」
横を向いたままの沙耶の目がゆっくりと開いた。


「独り言ついでにキスしようなんて、全然懲りてないんじゃないのっ……」
「ごめん、いや、願望を口にしただけで、したいけどしない……っていうかいつから起きてたんだ?」


 基は、そのまま沙耶の顔を覗き込む。


「……ベッドに運ばれてから」


 沙耶は壁を向いたまま唇をかみしめる。


「俺が好きだなんだと言っているのも全部聞いたのか」
「……」


 基の問いかけに、沙耶の頰がみるみるうちに赤く染まっていく。
 どうやらバッチリ聞かれてしまったらしい。



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