逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
もっと好きだと言いたい。
どうせ沙耶は眠っていて、聞いてはいないのだ。
そう思うと少し気が大きくなった。
基はベッドの縁に腰を下ろし、両腕を沙耶の体の横について、顔を近づけた。
「沙耶、これはただの独り言だが……俺は君の言う通り、どうしようもない子供みたいな男だ。たぶん君の中では、最低最悪の部類に属していると思う……。君に相応しい男になるよう、努力したい。だから俺が君を思い続けることだけは、許してくれないか……」
今の段階で自分を好きになってくれとはとても言えない。
だがこの胸に宿る思いの存在をただ許してくれたら、自分は生きていける。そんな気がするのだ。
「……沙耶、好きだ。君の全てが愛しい」
長いまつ毛を伏せて眠る沙耶の横顔に、口付けたい衝動にかられる。
あと少し、けれど二十センチの距離が遠い。