逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
そして基は、タクシーを呼び、スエットに半乾きの革靴、紙袋にスーツを入れてアパートを出る。
おかしな格好なのに、本人が堂々としているせいか、そんな雰囲気が微塵もないのがすごい。卑屈なところが何一つないのだ。
沙耶は妙な感動を覚えながら、タクシーに乗り込む基を見送った。
「じゃあ沙耶、また連絡する」
「……どうやって?」
一応スマホを持っている沙耶だが、基にはもちろん教えていない。
「沙耶あてに、机の上に手紙を置いておく。俺のスマホも水没したしな」
「手紙?」
「このご時世、なかなか渋いだろ」
そして基は、にっこりと笑い、
「わざわざ見送ってくれてありがとう、沙耶。好きだよ」
「……!!」
沙耶をビクッとさせ、反論を受け付けないままタクシーを進める。
「……調子、狂う……」
そう言うしかない、沙耶だった。