逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 翌朝、十時。沙耶はアドレスを片手に一軒の日本家屋の前に立っていた。


「藤塚(ふじつか)様……ここで間違いなさそうね」


 平屋の建物で、丁寧に刈られた生垣が美しい。家の周りもきれいに掃除されている。そんなところから丁寧な暮らしぶりが伝わってくるようだ。


 インターフォンを押すと、
『はい』
と、上品な女性の声が返ってくる。


「おはようございます。ソルシエールから参りました、志倉と申します」
『ああ、待ってましたよ。今、鍵を開けますね』


 それから、すぐに門扉の向こうにある引き戸が開いて、着物姿の女性が姿を現した。


「失礼いたします」


 門扉を開けて、玉砂利の道を歩き玄関の中へと入り、ソルシエールから提示するよう言われている、顔つきの身分証明書を夫人に差し出した。



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