逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
「ご確認ください」
藤塚夫人は、年の頃は七十代、優しそうな佇まいである。着ている着物も紬の良い品だ。
彼女は沙耶の身分証を手に取り、眼鏡をかけてじっと眺めると、
「可愛らしい方ねぇ」
と、にっこり微笑み、沙耶を家の中に招き入れた。
「実はね、来月この家を引き払うのよ。だから荷物を少しずつ整理しているのだけど、なかなか行き届かないところもあって、お手伝いをお願いしたかったの」
「かしこまりました。なんでもお申し付けください」
彼女の言うように、開け放した障子の部屋の中は、段ボールがいくつも積み上がっていた。
「じゃあまず本の整理をお願いできる? いるものといらないものに分けてあるから、それぞれダンボールに詰めていただきたいの」
「はい」
コットンのパンツとデニムシャツという格好の上にエプロン、軍手をつけ、さっそく沙耶は、仕事に取り掛かることにした。