逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 雇い主である伊織は全て知っていることだが、沙耶の実家はもともと横浜で貿易業を営む、かなり裕福な家庭だった。

 だが沙耶が十二歳のときに、病弱だった母が死に、薔薇色だった沙耶の人生は突如終わりを告げる。

 まず、父の経営する貿易会社に陰りが見え始めた。

 そんな中、父がたった二年で後妻を迎えたのだ。

(お母さんのことを、もう忘れてしまったの?)

 子供だった沙耶はひどく傷ついたが、父が幸せになるのならと、すべてを飲み込んでしまう。

 だが、義母は母に瓜二つの沙耶を毛嫌いした。肉体的に傷つけられることはなかったが、その心に、目には見えない傷をたくさんつけた。


 そして結局、家業の貿易業は不況の波にのまれ、倒産。横浜の家屋敷を売って、義母の実家がある奈良に引っ越したのである。

 子供の頃からずっと続けていたピアノもバレエも、辞めなくてはいけなくなった。



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