逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
なんとなく流されてしまったが、とりあえず辞める必要はなさそうである。
沙耶はホッとしていた。
潤は大手下着メーカーのプレズィールで働いている、二十二歳の美少年だ。
二十歳を超えて美少年というのもなんだが、童顔で少女のように美しい顔をしているのだ。
ただ天使のように可愛らしい顔をしてはいるものの、中身は祖母である伊織に似たところがありなかなかに辛辣で、場合によっては毒も吐く、面白い男だった。
伊織と潤と沙耶の三人で、潤のお土産の菓子を食べた。そのあと事務所にあるミニキッチンで、潤が食器を洗い、沙耶が布巾で拭く。
「そういえば沙耶ちゃん、ご両親は関西なんだっけ?」
「はい。奈良にいます」
「どうして帰らないの? 俺も昔バイトしてたからわかるけど、楽な仕事じゃないのにさ」
「父は母が死んだ後、再婚した別の女性と一緒に暮らしているんです。向こうにはその女性の家族も一緒にいるので……」
「ええーっ、なかなか人生ハードモードだね」
「でも、おかげさまでこうやって食べていけてますし」