逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 鍵は防犯上何度か変えられているのだろう。最近の仕様である。だが古めかしいドアノックは当時の記憶のままで、沙耶の手は細かい震えが止まらなくなった。


「基、手が震えるの……ごめんなさい。一緒に開けてくれる?」
「わかった」


 沙耶の手の上に自分の手を重ね、基が鍵穴にキーを差し込み、ゆっくりと回す。

 ガチャリと大きな音がして、ギィィ……とドアが開いた。

 沙耶は基に肩を抱かれたまま、足を踏み入れる。


「ああ……」


 懐かしさに涙があふれた。

 カーテンや絨毯、置いてある花瓶など、細かい調度品はもちろん当時と違っているのだが、建物自体はほとんど手が入れられていないようで、何もかもが沙耶の記憶とピタリと当てはまるのである。


< 255 / 322 >

この作品をシェア

pagetop