逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
今思えば、あのやり方はまずかったように思う。
自分としてはただの理由づけだったのだが、今、ひざまずいて掃除をするあの日の沙耶を思い出すと、なぜか胸が苦しくなるのだ。
理由はわからないが、あれはもう二度とやらないほうがいいと、基の本能が告げていた。
「沙耶。今日、この後の予定はどうなってる?」
「常務室が最後ですので、終わりましたらソルシエールに戻ります」
沙耶は常務室の窓を開けながら答える。
窓と言っても換気のための小窓であるが、開けると気持ちのいい風が吹き込んできた。
気持ちよさそうに目を細める沙耶を見て、基はずっと考えていたことを口にする。
「なぁ、沙耶。デートしないか」
「……はい?」
沙耶が怪訝そうな顔をして、振り返った。
「寝ぼけていらっしゃるんですか。馬鹿なこと言わないでください」
「ねぼけてなどいない。馬鹿じゃない。ずっと考えてたことだ」