逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
「あったぞ、沙耶!」
「ええっ!」
ハァハァ言いながら、基は満面の笑顔でつかんでいた三角巾を差し出した。
一応受け取って裏表を確認する。見慣れた三角巾だ。
「……私のだわ」
「だろう!」
基は得意満面である。どこからどう見ても褒めてくれと顔に書いてある。
「俺は目がいいんだ。下の街路樹に引っかかっていたから、登って取った」
「登って……木登り!?」
「それも得意だ」
「そう……ありがとう」
沙耶は受け取った三角巾を頭に巻きつける。
(こんなこと言ってはあれだけど……大きな犬にとってこいさせた気分。)
けれど自分のために彼がエールタワーの下まで降りて、三角巾を探しに行ったのは本当だ。
(どうしてこんなことするんだろう……。)
「……わかりました」
「えっ?」
「今日は無理だけど、考えておきます」
約束はしていない。考えておくと言っただけだ。
沙耶はそう自分に言い聞かせて、カートを押して常務室を出て行った。