逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

「それは構いませんが、いいのですか? これは仕事を離れた一人の友人としての立場で言いますが、美鶴はいいやつですよ」


 神尾なりの好意からの発言だった。だがしかし、そんな好意は沙耶の心をえぐるだけなのである。


「いい人なのは話してみてわかりました。だけど私はそういう関係になりたくないんです」


 少し険のある声色に、神尾が一瞬怪訝そうな顔をした。


「志倉さん?」
「……ごめんなさい。でも、その……私とは住む世界が違います。いいなと思ってくださったとしても、時間の無駄なんです。だから忘れてほしいんです」
「時間の無駄とはなかなかな発言ですね」


 神尾はかたくなに名刺を返そうとする沙耶に、逆に興味を持った。

 エール化粧品の御曹司であり、常務執行役員である不二基の親友であり、幼馴染であり、仕事では秘書を務めている神尾である。

 普段は、基と親しくなりたい女性たちや、彼の華麗なる交友関係の輪に入りたい、紹介してもらいたい、それがダメならなんでもいいからおこぼれに預かりたい、とまで言ってくるような人間を、片っ端からブラックリストに入れているのである。


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