逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~
それが沙耶に限っては違うのだ。
「どうしてですか?」
「今言った言葉の通りです……他に意味なんかありません」
(住む世界が違うから。時間の無駄だから。)
神尾は沙耶の言葉を反芻しながら、それでも少しかたくなに過ぎないかと、不思議になった。
(エール化粧品のたった一人の跡継ぎである、基様レベルなら、確かに住む世界が違うと身を引こうとするのもわからんでもない。だが美鶴なら……確かにエリートではあるが、頑張ればなんとかなるだろう。あいつの一族は男系だし、他に兄弟もいるし、政治家になる予定もないし……。それはもちろん俺だって同じことだが……。)
何気に自分が相手だったらと考えてみるあたり、神尾も沙耶を気に入っていると言っていいのかもしれない。
「もしかしたら以前、そういったご苦労があったのでしょうか」
始まってすらいない恋を拒もうとする沙耶の顔から、その瞬間、さっと血の気が引いた。
「そんな、大したことではないです」
そしてこれ以上、神尾からは何も聞かれたくないと言わんばかりに立ち上がり、頭をさげる。
「すみません、失礼します」