『N』ー忍びで候うー
「医者に行け」そう言うと一花の足がくるっと方向を変えた。

「ぁっ」
やっと顔を上げる。

カランコロン、軽い音がして閉まっていたはずの扉は開けられた。

「今日は店は休みだ。お前は帰れ。」

真っ暗な店内が一花越しに見えた。

「それとも何か用があったのか?」

あたしが行かないからか、一花は開けたドアの前で肩越しに少し振り向いた。


「無いなら帰れ。訓練も休みだろう。」

「知ってたの?」
俯いてしまう。

「弟子のようなものだからな。他の奴らも知ってるだろう。」

カランコロン、もう一度音が響いた。







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