『N』ー忍びで候うー
あっと思って顔をあげた。

「訓練が無くなったことで、悩んでるのか?」

閉めたドアの前、一花がこちらに向き直っていた。
宙に浮いていた右手をあたしは慌てて引っ込めた。
「ずびび、、」間が悪く鼻水が。

「訓練はそのうち始まるだろう。

訓練は与えられるだけじゃない。
お前には大学もあるんじゃないか?
自ら取り組んでこそ初めて身につくもの。

何にしても体調が整っていなければ務まらないな。」
もっともだと思った。

一花の瞳から目が離せなかった。


「お前はお前の場所で万全を尽くせ。」

頭にかかっていたもやもやがさぁーっと晴れていくようだった。

「わかったな?」口元に微笑みが見えた。



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