『N』ー忍びで候うー
ドアを叩く。呼び掛けにも返事がない。

「七花?、、入るぞ?」
ドアを薄く押し開けた。

朝日にベッドが盛り上がっているのが見える。
「寝てるのか?」

音を立てず近寄る。

七花の顔が見えた。

額に大粒の汗をかき、顔が火照り、苦しげにあえいでいる。そっと顔に触れる。。
「すごい熱だ。いつから発熱している?」
七花は答えられる様子ではなかった。触れる一花の手が冷たいのか、七花は一瞬顔をしかめたものの、すぐ心地よさそうに顔を寄せてきた。吐息も熱を含んで熱い。

一花は軽く唇を合わせた。


すぐに郷太が駆け上がってきた。
「どしたの?合図なんて送ってき、、七花?」
「ひどい熱だ。解熱剤を持って来てくれ。」

七花のぐったりした顔が見えた。

郷太は音も無く部屋を出て行った。




七花の顔に汗で絡みついた髪を拭う。

冷たい手が心地よかった。
薄く開いた視界に一花が見えた。

「いち、、はぁ、、」
頭がぼうっとする。。

「何も言うな。もう少し寝ているといい。」

七花は目を閉じた。
冷たい手が顔に触れているのが心地よかった。。


こくん、、

のどに冷たい液体が通っていくのを感じた。


一花はそっと顔を起こした。唇が離れる。

瞼を閉じ、眠るような七花をじっと見つめた。



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