セシル ~恋する木星~


半ば押し切られるようにして、セシルはワインをほんの少しだけ口に含んだ。
そして、ゆっくりと隣に座っている山口のほうを向く。

どうしたらいいかわからず、そのまま山口の目を見つめる。
すると、山口はセシルを優しく抱き寄せ、キスした。

セシルがどのタイミングで山口の口に移せばいいのか迷っていると、重なっていた山口の唇が少しふわっと浮いたようだった。
それから、山口は注意深く、セシルの顎を左手で少し引き下げた。

その瞬間、セシルの口の中の赤ワインが少し流れ出ていったような気がした。



< 168 / 201 >

この作品をシェア

pagetop