浅葱の桜



「近藤さああああん!」



近藤さんを呼ぶ大きな声に私は思わず沖田さんの背中の影に隠れた。


な、何?


だだだっと廊下を駆けてくる足音と共に盛大に開かれた障子戸。


そこから顔を出したのは格好いいというより可愛いという表現が似合う男の人

と、眠そうに目を擦っている男の人だった。


近藤さんから「平助」と声をかけられた彼は奥の人の腕をしっかりと握っている。



「聞いてくれよ、近藤さん! またぱっつぁんのやつ俺の朝食のおかずを––––」

「おい、平助」



その声で土方さんがいることにも気がついたのだろう。


だらだらと冷や汗を流し始めた彼の頭に土方さんは容赦なく鉄拳を振り下ろした。



「〜〜〜〜ったあ! よ、容赦なさすぎるだろ、土方さん……」

「うるさい、朝っぱらから何大声出してやがる」

「聞いてくれよ! またぱっつぁんが僕のおかずを奪いやがったんだ! しかも久々の魚を!」



涙目になって叫ぶ彼のことをなぜか冷めた目で見てしまう私がいた。


すっごく、子供っぽい。


容姿も合わさってその印象はさらに私の中に根付く。



「平助はおかずごときで色々騒ぎすぎなんだ」

「成長真っ盛りの僕はしっかり食べないと背が伸びないんだって!」

「まだ成長するのか?」



自分より低い彼の頭を触ってポンポンと叩く。



「触るなっ! 身長縮んじゃうだろ!」

「そんなの迷信に決まっている……だろっ」

「や、めぇ。ろっ! 潰れる、本当に潰れるからぁ〜っ」



グェっと声を漏らした彼はもう一人の男の人に上に乗られて見事に潰れていた。


どうしたらこうなるのだろう。



「わかった。後で俺の分のおかずをあげるから。な、それでいいか?」



彼に向かって苦笑を漏らしながら近藤さんが言うと途端に目を輝かせ始めた彼。



「単純だな、相変わらず」



っ! 私の心の中を読んだような沖田さんの言葉に唾を飲む。



「またそれを言うか?」

「変わんねぇからな。結局」

「ひっど! 近藤さん以外皆僕の扱い雑すぎるよ!」

「……ところで」



バタバタする彼のことも気にせず乗ったままの男の人はこてん、と首を傾げて、



「君は誰だ? なぜ総司の影に隠れているのだ」



絶句したままの私と視線のあったまま離すことができなかった。


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