『それは、大人の事情。』【完】
「梢恵と二人で行くって言ったのに、どうしても付いてくるって聞かなくて……ごめんね」
「うぅん、そんなの全然OKだよ。理央ちゃんにも佑月のドレス選び手伝ってもらえるからいいじゃない。なんたって、将来はファッション関係のプロカメラマンになるんだもの。
あっ! そうだ。理央ちゃんに結婚式の写真撮ってもらったら?」
メニューを広げ、軽い気持ちでそう言ったのに、佑月は「冗談じゃない!」と真顔でテーブルを叩く。
「一生に一度の大事な結婚式の写真を、理央になんて頼めないわよ。まだまだ未熟な学生なんだから」
姉に冷たく拒否られ、理央ちゃんがムッとしてる。
「そりゃ~まだ未熟な学生だけど、カメラ学科の先生達の評価は高いんだよ。今度の写真展にも作品を出す事になってるしさ~」
でも、佑月は全く聞く耳を持たず、素知らぬ顔でメニューを覗き込んでいる。なんだか理央ちゃんが可哀想になってきて、それとなくフォローした。
「写真展って、去年、私が観に行ったやつ?あれって、成績優秀な人しか展示してもらえないんだよね?」
すると理央ちゃんは嬉しそうに大きく頷き、得意げに話し出す。
「そうなんですよ~。年に一度、多方面で活躍している卒業生の写真展なんです!在校生は先生の推薦を受けた十名しか展示してもらえないレベルの高い写真展なんです。
去年は優秀な人が居たから私のは目立たなかったけど、今年はもうその人達が居ないから業界関係者にアピールする絶好のチャンスなんです」