『それは、大人の事情。』【完】
「沙織ちゃん、待って……」
後を追おうとしたんだけど、蹴られた足に激痛が走り、立ち上がる事が出来なかった。
その時からだったと思う。私と沙織ちゃんとの本当の戦いが始まったのは……
意地になった私は、次の日も、また次の日も、ひたすらキャラ弁を作り続けた。
こうなったら、沙織ちゃんが食べてくれるまで絶対に諦めない。でも、敵もなかなか手強くて、私の作ったお弁当を食べる事はなく、幼稚園帰りに結花ちゃんの家に遊びに行くのも止めなかった。
徹底的に私に反発するつもりなんだう。それならそれでいい。私は私のやり方を貫くだけ。
そして、冷戦状態のまま一週間が過ぎ、今日は佑月のドレス選びの日。私は真司さんに沙織ちゃんを任せ、久しぶりに一人で出掛けた。
昨日、梅雨明けが発表されたと思ったら、今日はもう澄み切った夏の空。早くも入道雲が湧き上がっている。
眩い日差しに目を細めながら佑月と待ち合わせたカフェに入ると、既に佑月が来ていて、大きく手を振り私を呼ぶ。
しかし、佑月は一人ではなく、若い女性と一緒だった。
「あっ、もしかして……理央(りお)ちゃん?」
「はい、お久しぶりです」
その娘は佑月の年の離れた妹で、前に会ったのは一年ほど前。彼女が通う専門学校の写真展だった。理央ちゃんは将来ファッションフォトグラファーになるのが夢らしい。
昨日、佑月に理央ちゃんからたまたま電話があって、今日、私とドレス選びに行くって話したら理央ちゃんも一緒に行きたいと言い出したそうだ。