『それは、大人の事情。』【完】
そうかもしれない。私がしっかりしていたら沙織ちゃんもこんな事しなかったのかも……悪いのは私だ。
罪悪感に苛まれ、ひたすら謝り続けたが、母親の怒りは一向に収まらない。
「おじいさんが大企業の専務さんとか聞いたけど、お母さんがあれじゃあねぇ~とうとう沙織ちゃんの面倒が見れなくなって、育児放棄したってワケ?」
「はぁ? あれとは?」
私がそう聞き返した時、今まで口を真一文字に結び黙り込んでいた沙織ちゃんが「ママの悪口言わないで!」と声を荒げた。
沙織……ちゃん?
「どうして皆ママの事悪く言うの? ママは悪くない!」
友達の母親に掴み掛ろうとしている沙織ちゃんの体を慌てて抱き止めた時だった。怪我をした友達が、得意げな顔をして言ったんだ。
「そんな事ないよ。沙織ちゃんのママは悪い人だよ。だって、他の男の人と浮気して離婚したんだもん。それに、その男の人に騙されてお金取られて捨てられたんでしょ?
それって、悪い事したからバチが当たったんだって、ウチのママが言ってたもん。ねぇ? ママ、そうでしょ?」
その場に居た大人全員が言葉を失った。でも、ただ一人、沙織ちゃんだけが「ママは悪くない! バチなんて当たってない!」と叫んでいた。
私は暴れる沙織ちゃんを抱き締め、沸々と湧き上がってくる怒りを必死で抑えながら母親を睨み付けた。
「そんな話しを子供にしたんですか?」
「それは……」
一瞬、口ごもった母親だったが、悪びれる様子もなく涼しい顔で言う。
「皆知ってるし、本当の事だもの。何が悪いの?」