『それは、大人の事情。』【完】
PS
梢恵さんの気持ちもお姉ちゃんに聞きました。両想いだったんですね。今度こそ二人で幸せになって下さい。私は世界中を飛び回って、蓮君よりイケメンをゲットします! 理央】
「理央ちゃん……ごめんね」
悲壮感のない明るい文言が並ぶ手紙。それが、余計に私の胸を締め付けた。
理央ちゃん……本当は凄く傷付いて辛い思いしたんだよね。なのに、恨み言の一つも書かず、私と蓮の幸せを願ってくれてる。私の為に、有難う……本当に、有難う。
ここまでしてくれた理央ちゃんや佑月の好意を無にするワケにはいかない。一刻も早く蓮に私の気持ちを伝えなきゃ……
理央ちゃんからの手紙を胸に抱き、そう思った。
「オーナー! 蓮の電話番号教え……あれ?」
さっきまでギャラリーの前で写真を眺めていたのに、どこ行ったんだろう?
カウンターの奥を覗いても、オープンテラスを確認してもオーナーの姿はない。もしかしたらカフェの入り口横にあるガーデンかな?
そう思った私は猛ダッシュでドアに突進し、外に飛び出す。が―――
―――ドカッ!!
「わわっ!」
勢いに任せドアを開けたものだから、カフェに入ろうとしていた人と見事に激突してしまい、おまけに運が悪い事に、雨で地面が濡れていたから滑って豪快に尻餅を付いてしまった。
「痛ったぁ……」
こんなコケ方するの子供の時以来だ。めっちゃ恥ずかしいんだけど……
ぶつかった人に顔を見られたくなくて、視線を落とし立ち上がろうとしたした。すると、目の前の傘の下からスッと手が伸びてくる。
「大丈夫ですか?」