『それは、大人の事情。』【完】
あれとは、佑月が置いていった私宛の手紙。
「じゃあ、あの手紙は理央ちゃんから……の?」
オーナーが頷いたのを見て、急いでテーブルに駆け寄り封を開ける。中には、可愛い丸文字で書かれた手紙が入っていた。
【梢恵さんへ
梢恵さん、お元気ですか? この手紙を読んでくれてるって事は、蓮君の気持ちを聞いてくれたんですよね。
私も蓮君と梢恵さんの事、全部聞きました。今でも梢恵さんが好きだって事も。もぉ~梢恵さん、どうして言ってくれなかったんですか~まさかあの写真のモデルが梢恵さんだったなんてビックリですよ!
蓮君たら、イギリスに来てすぐ私に謝ってきたんです。自分には忘れられない女性が居る。だから私とは付き合えない。悪かったって。私、納得いかなかったから相手の女性が誰か教えてくれるまで別れないって言ったんです。
そしたら、梢恵さんだって……蓮君は梢恵さんはもう結婚してしまったけど、忘れられないって言ってました。
けど、私はお姉ちゃんに梢恵さんは結婚してないって聞いていたんです。蓮君に梢恵さんの事聞いた時はショックだったから、その事を言えなかったんですが……
でも、やっと踏ん切りが付いて蓮君に話しました。蓮君、めっちゃ嬉しそうでしたよ!
実は私、留学先の先生の影響で野生動物を撮るのにハマっちゃって……留学期間が終了した今年の三月からアフリカに来ています。だから蓮君の面倒見てる暇がないんですよ。
梢恵さん、蓮君の事お願いしてもいいですか? 自己中なとこありますけど、一途ないいヤツです。