『それは、大人の事情。』【完】
自分のマンションに戻り、洗濯機のスイッチを入れたところで気が付いた。
わざわざ私の部屋に持ってこなくても、近所のコインランドリーに行けば良かったと。
洗濯物がグルグル回る様子を眺めながら「私って、バカ……」と苦笑い。
でも、以前のびしょ濡れの服は別として、なんの関係もない男の子の洗濯物を自分の家の洗濯機で洗ってあげようなんて、普通は思わないよね。けど、あの子のモノなら別に構わないかなって、特に抵抗を感じないのはなぜだろう。
白石蓮と関わると、どうも私の調子が狂ってしまう。
やっと洗濯が終わり、乾燥に入ったところでスマホが鳴った。
真司さんからだ。今日は娘さんと会ってるはずなのに、どうしたんだろうと思いながら電話に出ると、神妙な声が聞こえてきた。
『梢恵、すまないが頼みがある』
「えっ?何?」
『娘を……少し預かってくれないか?』
「真司さんの娘さんを私が?」
ハッキリ言って、断りたかった。真司さんの娘さんならいつは顔を合わせる事になるだろうと思っていたけど、こんなに突然、心の準備も出来てない状態で会うのはちょっと……
それに、真司さんが一緒ならまだしも、預かるって事は娘さんと二人っきりって事でしょ?そんなの困る。何を話していいのかも分からない。
『本当に申し訳ない。でも、どうしても絵美と話しをしなきゃいけなくなって……娘には聞かせたくない話しなんだ』
「じゃあ、絵美さんの実家は?専務のお宅はダメなの?」
真司さんの娘さんを預かる自信がなかった私は、やんわり断ろうとしてた。