それは、小さな街の小さな恋。
弱いな、私。
自分の不甲斐なさを噛み締めていたとき、ぽん、と俊ちゃんの大きくて温かい手が、頭の上に乗った。
小さい頃から俊ちゃんは、私が泣いていたりするとこうして頭に手を乗せて私を安心させてくれる。
当時は泣いている私を前にしてどうしたらいい分からず、苦肉の策としてこうしてたらしいけど。
でも昔とは違う、大きな手。
でも変わらない安心感。
藪下家にとって、太陽のような存在だった母が乳がんで亡くなったのは11年前。
私が中学3年生のときだ。
長い梅雨が明け、久しぶりに雲ひとつない空が眩しかったあの日、藪下家から太陽が消えた。