あの頃のように笑いあえたら
「……まだ分からないけど、カウンセラーとか、言葉の専門家とか。そんなことができたらいいなって。モデルは高校卒業で辞めるつもり」

この話を、誰かにするのは初めてだった。

黙って池を眺めながら聞いていた源は、ゆっくりと私を振り返る。

「……そっか」

私の全てを、全身で。無理にじゃなく、自然に受け止めてくれる。

そんな源に、私は全てを委ねる。

「いとなが、カウンセラーになって。オレが……カメラマンか、サッカー選手?になった時……」

「うん」

「もちろん、一緒にいるよな」

遠くを見つめた源が、迷いのない口調で言う。

「……うん、もちろん!」

強い風がまた木々を揺らし、2人の頬を冷たく撫でる。

「……いとな」

大好きな、大好きな優しい声で呼ばれる。

「うん?」

ゆっくりと顔を向けると、不意に重ねられた柔らかな唇。

ー ーえっ?

思わず目を閉じる。

暖かな感触は初めて感じるもので、でもどこか懐かしくて、ドキドキする。
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