柴犬～相澤くんの物語り

　最近元気のないおれを見かねたのか

　「今日は私が夕食をもらって来ますから相澤君は休んでて下さい」

　高宮さんが言った。



　「いいよ、大丈夫だから。あんたは体が大きすぎて目立つんだから」

　そうは言ったものの、動くのが億劫でいつまでも、だらだらと小屋の中にいすわっていて、いつの間にか眠ってしまっていた。




目を覚ますとすでに外は暗く高宮さんの姿はなかった。

まさか本当に食料を探しに行ったんだろうか？


　大急ぎで繁華街に向かって走りながら、昨日、中華料理店のおばさんがおれの頭を撫でながら言っていた言葉を思い出した。



　「急用ができて、二、三日留守にしなくちゃいけなくなったんだよ。食べ物も置いていけないんだけどごめんよ」