柴犬~相澤くんの物語り
第四章 「哀しみとぬくもり」
それでも少しずつ少しずつ、自分の中の歯車が狂いはじめた。


 十二月も半ばになると、ますます風は冷たく時おり雪がぱらつく。


 寒さはおれの心まで凍てつかせた。

 一日中小屋の中で丸くなって寒さをしのぎ、夜になると食料を求め夜の街に出向く。そんな生活が次第に辛くなってきたんだ。



生きるためには食わなくちゃいけないんだ。


 飼い犬の時には、そんな当たり前のことに気づきもしなかった。

 でも高宮さんは、ただの一度も弱音をはかなかった。

いつもにこにこ笑ってる。

おれがそばにいるだけでいいと優しい瞳を向ける。



 
 それすらおれには重荷になっていた……。
 
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