柴犬~相澤くんの物語り
それから、その場から動けない高宮さんに口移しで水をのませたり、食べ物を運んだり、少しでも早く体が乾くように彼の背中のしずくを舐めたり、おれは一生懸命、看病した。

 そんなおれに

 「君は、おうちに帰らなくてもいいの?」
彼が尋ねる。


 「そしたらもう高宮さんとこうしていられないからな。帰るなら、あの小屋だ。高宮さん、バッグ忘れてるしな」




 「……ずっとひとりでも平気だったんです…友達もいなかったしボール遊びとかもした事なかった…でも、君と出会って一緒に遊んだり…暮らしたりしてみて誰かと一緒にいる事が、こんなに楽しいなんて初めて知りました……もう一匹は嫌です…」


 「高宮さん、前におれに聞いたよな、私が汚くなっても側にいてくれますか?って。おれ、当たり前だって答えたけど、だんだん辛くなってきたんだ。あんたは、家に帰ったほうが幸わせなんじゃないかって。でも高宮さんが構わないなら、今度こそ、ずっと一緒にいよう。おれもひとりぼっちは淋しい」


 にっこり笑った。
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