不倫のルール
「惚れてる女の子から言われたら、どんな事でも、それは“わがまま”じゃないんだ」

柴田さんはフッ……と、いつもの優しい笑みを浮かべた。

「それは、その子の“望み”だから。俺は全力で、その望みを叶えたくなる。だから、“わがまま”じゃない!」

柴田さんが両手を伸ばして、私を抱きしめてくれた。私も、柴田さんの背中に両手を回した。

柴田さんの温もりを、身体と心の両方で感じる。

その時、すぐそばで電子音が鳴った。

「ちょっとごめん」柴田さんはそう言って、少しだけ身体を離した。ポケットからスマホを取り出して、電子音を止めた。

「繭ちゃん、お誕生日、おめでとう!」

柴田さんは、ニッコリ笑って言ってくれた。

「っ!……ありがとうございます!」

さっきの電子音は、午前零時にセットされたアラームだったようだ。

またもや涙が溢れてしまい「繭ちゃん、泣き虫だったんだ」なんて言いながら、柴田さんが両手で涙を拭いてくれた。

「前に誕生日聞いた時、冬生まれだって言ってたよね?」

「……ごめんなさい!嘘をつきました」

「嘘?なんで?」

「……誕生日を教えたら、お祝いしてもらえるかも!て、期待しちゃうんです。でも……何もなかったら、寂しくなっちゃうから」

「そっか……期待してもらって、よかったのに。……あっ!今回は、少し時間をください!」

柴田さんが、慌てて言った。

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