不倫のルール
「俺って、結構カンがいいから、秀子さんが探っている事には気付いた。だから繭ちゃんとは、しばらく二人では会わなかった。でも、他の女の子達とはそれまで通りに会った。お陰で、秀子さんに全部バレてこうなった」

坊主頭を撫でながら、ゲンさんは自嘲気味に笑った。

「新庄さん……」

「潮時だったんだ。俺は、自分では繭ちゃんを手放せない。秀子さんに飼われているような俺では……」

「新庄さん!!」

強い言葉で、ゲンさんの言葉を遮った。

「今日話しただけなのに、新庄さんの秀子さんへの愛情も、秀子さんの新庄さんへの愛情も、しっかりと感じました!」

ゲンさんは、目を見開いて私を見る。

「『飼われている』なんて言う前に、考えてください。新庄さんが本当にやりたい事。……新庄さんがお料理をしている姿、私、大好きでした。新庄さんが、とても楽しそうだったから」

「繭ちゃん……」

「新庄さん、短い間だったけど、楽しかったです。……バイトは続けますから、これからもお願いします。最後に、ここのコーヒーは奢ってください。おいしかったです」

私は、座ったまま頭を下げた。顔を上げると、席を立った。

「繭ちゃん!」

ゲンさんに背中を向けた所で、呼び止められた。

「ずっと疑問だった。……繭ちゃん、俺が結婚してた事、知ってたよね?」

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