不倫のルール
道端に倒れ混む事を覚悟した時、グッ!と腕を引っ張られた。

「っ!……黒崎課長!」

体勢を建て直した私を見て、黒崎課長は、フッと短く息を吐いた。

「瀬名君がこんなに酔ってるなんて、初めて見たな」

「すみません!ありがとうございます!」

私は、深々と頭を下げた。顔を上げて黒崎課長と目が合うと、ニヘラッと笑った。

「……この先の、タクシーの営業所に行くつもだったんだろ?送ってくよ」

黒崎課長は苦笑しながら言ったのに、酔っぱらいの私は、全然気にしていない。

「は~い!」

右手を真っ直ぐ上げて返事をすると、フラフラしながらも、軽やかな足取りで黒崎課長についていく。

そんな私を、黒崎課長はやっぱり苦笑いをしながら見ていた。

黒崎課長の自宅と、一年とちょっと前に引っ越した明奈のおばあちゃん家は、同じ方向だった。

だから飲み会の時は、黒崎課長と一緒に帰るようになった。

友人所有の一軒家に、管理人代わりに住むようになった事も、黒崎課長に話していた。

営業所で、五分ほど待ってタクシーに乗った。

酔っぱらいの私は、キャッキャッとはしゃぎながら、黒崎課長にしゃべっていた。

話した内容を覚えていないのが、情けない……

おばあちゃん家がある路地の入り口で、タクシーを降りる。

「黒崎課長、お疲れ様でした~!」

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