不倫のルール
深々と頭を下げてから顔を上げる。右手を腕から大きく二~三回降ってから、タクシーに背を向けて歩き始めた。

フワフワして気持ちいい……まるで、雲の上を歩いているみたいだ。

その時の私は端から見れば、フワフワというより、フラフラだっただろう。

何かに躓いたような気がした。大きくよろける。

すると、またもや腕をグッ!と引っ張られた。

いくら私が酔っぱらいでも、さすがに誰に助けられたかわかる。

「たびたびすみません!黒崎課長!」

今回は腕を支えられたままだったので、黒崎課長を見上げながら、お礼を言った。

「タクシーは、とりあえず行ってもらったから。家まで送る」

大きく息を吐いた後、黒崎課長が言った。

「かたじけない!」

「……なぜ武士?」

自分でもよくわからない会話をしながら、黒崎課長に支えてもらって家の玄関まで歩いた。

自分の名誉の為に言っておくが、私は本来こんなに手のかかるヤツではない。

お酒だってそこそこ強いから、酔っぱらって周りに迷惑をかける事もほとんどない。

ましてや、こんな風に上司に迷惑をかけて、ヘラヘラ笑っていられる性格でもない。

……この日の私は、最悪だった。結局、そのツケを自分で払うことになるのだ……

バッグの中から、家の鍵を取り出す。鍵を開けようとしたが、鍵を落としてしまった。

「落としちゃった~」

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