不倫のルール
「そんな事まで……」

本社 営業部所属の鈴木さんには、入社してすぐくらいから、気にかけてもらっていた。

食事に誘われた事もあったけど、二人きりで会った事はない。職場の同僚何人かと、飲みに行ったり、休みの日に出かけたり。

玲子さんには「付き合ってみれば?」なんてよく言われた。でも、同じ職場の人と「好きになれたらいいな」なんて曖昧な気持ちでは付き合えない。

それに……四才年上の鈴木さんは、真っ直ぐで優しい人だと思っているけど『職場の先輩』以上には思えない……

そんな確信めいた気持ちが、私にはあったから。

鈴木さんから「付き合ってほしい」と、はっきりと告白された時は「ごめんなさい!」とすぐに断った。

「はっきりとした理由で断れなかったのは、俺の事を『好き』て言えないからだろ」

今度こそ「違う!」と言わなければいけないのに……

自分で気付いていなかった想いが溢れてきて、うまく言葉が出てこない。

黒崎課長に、父の事を重ねて見ていた。陽菜ちゃんに愛情を注ぐ黒崎課長を、すてきだと思った。

……私も、こんな風に黒崎課長に愛されたいと、思っていた……?

黒崎課長だから、こんな風に簡単に家に上げてしまったの……?

自分の気持ちが掴まえられず、黒崎課長を、ただただ見つめた。

黒崎課長は、両手で私の頬を包んだ。

「繭子の嫌がる事は、絶対にしない。決めるのは、繭子だから」

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