不倫のルール
胸にキリッ……とした痛みを感じながら言った。

美冬は、小さく首を振った。「まだ、続きがある」と。

柴田さんの言葉にびっくりしながらも、その女の子はさらに食い下がった。

「まだ、お付き合いしている訳じゃないんですよね?同じ会社の女の子と飲みに行くぐらい、いいと思いませんか?みんな、柴田さんと飲みに行くの、すごく楽しみにしているんです!」

瞳をウルウルさせながら小首を傾げて、完璧なお願いスタイル。

世の中の男の九割は、お願いをきいてしまうだろうという、愛らしい姿だったそうだ。

「見てたのか!?」と突っ込みたくなるくらいの細かい描写に、そう言ってみたら「安井さんから聞いた」と美冬に返された……

柴田さんは、少し真剣な顔をして言った。

実は一度告白をして、もうフラれている。彼女に「男として見ていない」と言われた。それでも諦めきれなくて、何かと理由をつけて無理矢理に会ってもらっている。だから……男として中途半端な事はしたくない──

柴田さんの意外な告白に、その場は誰も何も言えずに終わった。

だが、当然その話はあっと言う間に社内に広まった。

──「それって……本当に私の事かな……?」

そうっと、美冬の様子を伺うように言えば、ピシャリ!と美冬に言われた。

「柴田さんの事を『男として見ていない』なんて言う身の程知らずなヤツが、繭子の他にもいると?」

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