初恋フォルティッシモ
先輩はそう言うと、「あ、そろそろ練習始まる」なんて呑気にそう言って、またすぐに部活に戻っていく。
でも、そんな先輩の後ろで、俺は音楽室の壁にもたれたまま、動けない。
それも当然かな?
だってこんな話聞かされて、いつも通り冷静になんていられっかよ。
…青田と、麻妃先輩が…デート…。
……いや、嘘だ。絶対、嘘。
そう思いながら後ろからいつまでも麻妃先輩を見つめていたら、そのうち麻妃先輩が俺の方を振り向いて、目が合うなり言った。
「…あっ。三島くーん、そろそろ休憩終わりだよー」
「……」
「こっち来てー」
麻妃先輩はそう言うと、俺に向かって手招きをする。
…目ぇほっせー。それでよく俺を見つけられるよな。
俺はそう思いながら、でも今は部活をやる気分じゃなくて、床に座ったまま麻妃先輩に言った。
「…無理」
「あっ、もうまたそんなこと言ってー。言うこと聞かないならまた今日も居残り練習させるよ、」
そして俺のその短い一言に麻妃先輩はそう言うと、躊躇なく俺に近づいてくる。
…そんな麻妃先輩にすらも惹かれてしまう俺って、絶対病気だよな。
麻妃先輩は俺の目の前まで来ると、もう既に練習を再開しだした他の部員達を背に言った。
「ほら、早く立つ。練習しよ」
「やだ無理」
「小学生か。居残り練習したくないでしょ」
「……」
……麻妃先輩と二人きりになれるなら、俺は大歓迎だけどな。