初恋フォルティッシモ

…気になっていた?

何で?…まさか、


俺がいらんことを考えていると、渡辺部長が俺にドリンクメニューを渡してきて、言う。



「ほら、三島くんも何か頼みなよ」

「あ…ありがとうございます」

「酒は好き?」

「ハイ」

「何が好きなの?遠慮しないで頼め、」



…確かに、渡辺部長は気さくで良い人だ。

その人柄が顔にも出ている。

けど、何でそんな人が……不倫なんか。

しかも俺の好きな女と。


俺がそう思いながらモヤモヤしたままドリンクメニューを見つめていると、渡辺部長が言った。



「ところで、今何時?」

「えー…23時回ってます!」

「早いな、もうそんな時間なのか」

「部長、携帯は見つかったんですか?」

「いや、やっぱり家に忘れてきたらしい」



そう言って、「携帯がないだけで不便だな」と困ったように笑う。

何だか酷く酔いたい気分だった俺は、アルコールの強いものをオーダーした。
< 246 / 278 >

この作品をシェア

pagetop