初恋フォルティッシモ
…気になっていた?
何で?…まさか、
俺がいらんことを考えていると、渡辺部長が俺にドリンクメニューを渡してきて、言う。
「ほら、三島くんも何か頼みなよ」
「あ…ありがとうございます」
「酒は好き?」
「ハイ」
「何が好きなの?遠慮しないで頼め、」
…確かに、渡辺部長は気さくで良い人だ。
その人柄が顔にも出ている。
けど、何でそんな人が……不倫なんか。
しかも俺の好きな女と。
俺がそう思いながらモヤモヤしたままドリンクメニューを見つめていると、渡辺部長が言った。
「ところで、今何時?」
「えー…23時回ってます!」
「早いな、もうそんな時間なのか」
「部長、携帯は見つかったんですか?」
「いや、やっぱり家に忘れてきたらしい」
そう言って、「携帯がないだけで不便だな」と困ったように笑う。
何だか酷く酔いたい気分だった俺は、アルコールの強いものをオーダーした。