初恋フォルティッシモ

「……日本酒で」

「おー渋いな三島くん」

「マジか、ビールじゃねぇの三島」

「俺こう見えて日本酒大好きっすから」



…いや、今日初めて飲むんだけどね。

だけどその心を押し殺して、慣れたように笑う。

注文は備え付けの電話でするようで、渡辺部長が「俺も頼みたいものがあるから」とついでに俺のも云ってくれた。


…なるほど。

渡辺部長はきっとこの人柄でこうやって、麻妃先輩の心をも掴んだんだ。

なんとなくだけど、少しずつわかってきた。


上司なのに、部下と同じ目線で物事を見ているしやっている。


するとしばらくして、数分後にようやく日本酒がきた。



「あ、三島くん日本酒きたよ」

「あざっす」

「じゃあカンパーイ」



渡辺部長の言葉とともに、皆が自分のグラスを真ん中に寄せてカンパイをする。

俺が頼んだのは純米酒。

日本酒は詳しくないからわからないけれど……中辛口といったところだろうか?

元々酒は強くないから……すぐ酔いそう。

だから思わずおつまみの唐揚げばかりに、手が伸びてしまう。

するとそんな俺に、渡辺部長が言った。



「あれ、三島くん日本酒ほとんど飲んでないな」
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