スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
「なにコレ?」


出勤してきたヒナに、開口一番そう聞いた。
俺の手にある週刊誌を見て何の話か察したらしく、きゅっと口を結び眉を下げる。


「いや、いいんだよ別に。いつの間に岳とくっついてたのかなと思って」

「くっついてないです!」


ヒナはこちらが気圧されるほどの勢いで、即座に否定してきた。


「だってあんたじゃん。これ」


重なる岳の顔で大部分が隠れていても、写真に映っているのが彼女である事は知り合いならば見紛いようがない。


「私です。私ですけど……何でそんな事になったのかわからなくて」


このキスが合意の上じゃなかった事は
彼女の表情から読みとれた。



『初めて会った時から思ってた。良いなぁって』



岳の言葉が甦る。
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