スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
「言われたんだろ?好きって」


何でもない風を装い、軽い口調で聞いた。


「大事にしてくれると思うよ。あいついい奴だし」

「そんな……」

「皆に自慢できるじゃん。超人気俳優だよ?」


ヒナは今にも泣き出しそうな顔で首を横に振る。


「何でだよ。贅沢な奴だなー」


無理矢理笑顔を作りながら、もう一度冷静に記事を眺めてみた。


さっきも言った通り、彼女の顔は岳の顔でほぼ隠れている。
毎日見ているからこそわかったが、場所が特定できるような看板や建物は何も写り込んでいなかった。


この写真から彼女の素性がバレる事はない。
ひとまずそれでいい。


「ちょっと出てくる」

「春木さん、」


切羽詰まった声でヒナに何か言われたが、構わず扉を閉めて歩き出した。
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