スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
「私ね、今まで何百人てモデルさんのメイクしてきてるんだけど。撮影される時のコツ、教えてもらった事あるのよ」

「え!どんなのですか?」

「あのね……」


矢吹さんはどこか楽しそうに私に耳打ちする。


「いっちばん好きな人が自分を撮ってる、って想像するんだって。一番じゃなきゃダメよ。好きな人には可愛い顔見せたいって思うじゃない?そうすると、すごく自然な良い笑顔が出るんだって。」

「いちばん好きな人……?」


思わず視線を彷徨わせるが、探すまでも無かった。
春木さんは私の正面に立ち、カメラのチェックを続けている。
いつものクールな表情に戻っていた。


もしもそれが本当ならば、私はラッキーだ。
実際に好きな人に撮られるのだから、想像力を働かせる必要が無い。


『すごく自然な良い笑顔』が出る、はずだ。
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