スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
「よし、」


春木さんが顔を上げた。
カメラの調整が終わったようだ。

アシスタント代理の矢吹さんが張り切って照明をこちらに向ける。


その光の強さに驚いた。
眩しくて思わず目を細めてしまう。
こちら側に立ってみて初めて気が付いた。


「はい。まずはそのまま一枚」


春木さんの合図に合わせ、視線をカメラに向ける。


「……固い」

「えっ?」

「固いよ。表情が」


確かに、顔が引きつっているのが自分でもわかった。

心臓がうるさいくらい鳴っている。

意識すればするほど『自然な笑顔』の作り方がわからなくなる。
何度挑戦しても上手くいかず、やっぱりモデルは私には無理な気がした。



「すみません、緊張しちゃって……」



時間が無いのに。
このままじゃ皆さんに迷惑かけちゃう。

焦りが気持ちを置いて先走り、掌が汗で湿ってきた。

どうしていいかわからず俯きかけたその時



「……ヒナ。」



優しい声で名前を呼ばれた。



「笑って?」


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