スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
思いがけないところから
思いがけない声がした。

振り返ると、後ろにヒナが立っていた。
顔も腕もそれから服も煤で真っ黒に汚れ、肩で息をしている。

化けて出たかと思ったが幽霊ではなさそうだ。


「おま……どうやって」

「ロビーの窓が割れてたんです。そこから何とか」


ヒナは何度も咳をしながらか細い声で言った。
ガラスで切ったのだろうか、右腕から血が流れている。


それを目にした瞬間
脳みそごと沸騰したかのように体が熱くなった。


「……にやってんだ、このバカ!!!」


彼女の両肩を強く掴み、声の限りに叫ぶ。
大きく見開かれた目も、鼻の頭の汚れも、炎に照らされていた。


「死ぬとこだったんだぞ!!わかってんのか!?」

「ご、ごめんなさい。でも諦めきれなくて」


彼女が視線を落とした先、その小さな両手いっぱいに抱えられていたものの正体はすぐにわかった。

俺の写真が詰まったDVDーRとアルバムだ。
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