世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-

麻薬

「それで、話ってなんだよ」


コーヒーカップに口をつけ、青柳颯太はそう言った。

周りから見れば少し不機嫌そうに見えてしまう彼の見た目と言葉から、何となく別れ話をしているような空気になっている気がして何とも言えない気持ちになる。


「坂瀬くんのこと、なんだけど」


甘いミルクティーを一口飲んで、私は青柳颯太を見た。


「天馬か」


感情が読み取れないような表情に、私は言葉を続けた。


「坂瀬くんに伝えるように言われたことがあって」

「俺に?」

「うん」

「直接言えばいいのに。天馬、何だって?」

「えっと、約束を守れないかもしれないって」


その言葉を聞いた瞬間、青柳颯太は明らかに顔を歪めた。


「は?」

「あ、でもね、心配しないで、早まったりしないから、とも言ってた」

「...何やってんだよ...あれほど言ったのに」


苦しそうにそう言う青柳颯太は、本当に辛そうだった。


「ねぇ、教えてほしいの。坂瀬くんのこと」


私の言葉を聞いて、青柳颯太は顔を上げる。

その目は、鋭さと悲しみに揺れていた。


「坂瀬くんから、もう許可はもらってる。話せることだけでいい。話してほしいんだ」


何となく思った。

これは、もしかしたら残酷なことかもしれない、と。

坂瀬くんの表情、青柳颯太の瞳。

きっと今私は、青柳颯太に酷なことを迫っているのではないか、と。


「...分かった。今言えることは、全て話す」


それでも青柳颯太は、そう言った。

不器用に、不自然に微笑んで、青柳颯太は話してくれた。
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