世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
「アイツと一緒にいて、おかしいと思ったことは無かったか?例えば、綺麗なものを見た時の反応、とか」


そう言われて、思い出した。

坂瀬くんは私と話が合った。
私と本の趣味が合った。

だから、私が好きになった翡翠の絵を見せた。

その時の、反応。
坂瀬くんの表情から読み取れた、軽蔑や寂しさにも似たその感情。


「アイツには、色が見えないんだ」

「えっ?」


言われている言葉の意味が、分からなかった。


「アイツには、物の輪郭しか見えないんだってさ。シャーペンで書いたような黒い線で、アイツの世界は出来てるらしい」


青柳颯太は話を続ける。
でも、どの言葉も意味が分からない。

何かの比喩?
それにしては、具体的。


「俺にも分からない。アイツと同じ世界を見たことがないからな。アイツは出会ったときからそうだった。アイツには、線で縁取られた景色しか見えないらしい」


疑っても意味がない。
それに、私が信じなければ話は進まない。


「何かの病気?」

「...いや、病気ではない。そうだな...生まれつきのようなもんだな」


曖昧な返答に、モヤモヤする。

それに、まだ混乱している。

色が見えない、それがまだ、信じきれた訳じゃない。

でも、色が見えないとすれば、おかしいことがあった。
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