世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
「それでそれで?もっと聞かせて」


坂瀬くんはメロンパンを頬張りながら私が話すのを促す。
やっぱ甘いもの好きなんだなぁ、と思った。


「えっと、少年の世界の見方も、全く同じじゃないけど共感できた。悪い部分ばかり見えて、その分世界が残酷で最悪なものに見えるっていう考え。それに、少年の性格も面白かった。批判的、反抗的で、誰かを信じるとか、そういうことに後ろ向きな感じ。でも、少年はだんだんと周りを愛せるようになっていくんだよね。この小説を読むにつれて、私自身世界が愛しくなっちゃうような、そんな話だって私は思った」


私の感想に、坂瀬くんはうんうんと頷いて、「やっぱ遊佐さんに貸してよかった」と微笑んだ。


「俺もね、この少年にすっごく感情移入しちゃったんだ。世界をちょっと否定しちゃったりなんかしてね」


そう言いながら笑う坂瀬くんを、少し以外だな、と思った。
何かを否定するような、そんな人だとは思わなかった。
でもそれは、悪い意味でじゃなくて、何だか少し、人間らしさみたいなものを感じて、親近感が湧いた。


「でも、この小説に出会って、俺も世界を少し好きになったかな。元々嫌いだったって訳じゃないんだけどね」

「うん、なんか分かる気がするよ」


適当な相槌ではなく、本当にそう思った。


「ねぇ、また俺が気に入った本があったら貸してもいい?」

「うん。私も私が気に入った本があったら貸してもいい?」

「もちろん!すげぇ楽しみにしてる」


そう言って私と坂瀬くんは笑い合う。

この時間がすごく幸せだなぁと思えた。

そして、坂瀬くんにもっと素敵なものを見せたいと、そう思った。
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