サイレント・キス 〜壁越し15センチの元彼〜
二人で一袋ずつ荷物を持ち、また肩を並べて歩き始めた。
大きな駐車場を二人で歩き、スーパーの敷地から出ようとした時。少し見覚えのある車から、二人の男女が出てきた。
「え………」
紺色のセーターにジーンズを履いた、栗色の髪の男性を見た時、私の足はピタリと止まって動かなくなってしまった。
そんな私を見た深月くんの「凛花?」という声が微かに聞こえてくるけれど、もう、ハッキリとは聞こえてこない。
そのくらい、その男性と、その横を歩いてくる女性から目が離せなかった。
「松本……?」
そう私の事を呼んで、そのままこちらに向かってくる男性は、私の好きな人。朝比奈さん。
そして、その横にいる肩まである黒髪の清楚なイメージの女性は……恐らく、奥さんだ。
「朝比奈さん……こんにちは」
ドクン、ドクン、と心臓が跳ねる。
これは、朝比奈さんの姿を見ることができたという喜びからか、それとも朝比奈さんの奥さんを見てしまったという焦りからか。