イレカワリ
☆☆☆

部屋着になってダイニングへ行くと、すでに2人ともそろっていた。


いつも通り、何も変わらない食事が始まる。


あたしは2人を交互に見て、口を開いた。


「今日は海の命日だな」


純に言われた事をそのまま言う。


その瞬間、2人が箸を止めた。


目を丸くし、信じられないと言った様子であたしを見る。


「え、な、なに?」


なにかおかしい事を言ってしまっただろうかと、あたしは落ち着きなく2人を見る。


「お前、海の事を思い出したのか?」


お父さんのそんな言葉に、あたしは唖然としてしまった。


海の事を思い出した?


なにそれ、どういう事?


純は歩は海を知っているという前提で会話をしていた。


それなのに、海の事を忘れているって、意味がわからない。


あたしは混乱する頭をフル回転させてこの場の逃れ方を考えた。


「……って、純が言ってたんだけどさ。今日って海って人の命日?」


とぼけた顔を作り、無理やり誤魔化す。


心臓はドクドクと早くなり、背中に汗が噴き出した。
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