片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
冬也は伊集院様達と共に先に展示会場に入り、最終チェックをしていた。


私達は会場入り口の受付席に。


「小陽さん、私何だか緊張して来ました」

「気晴らしにお手洗いにでも行って来ますか?」

「あ、はい」


私は小陽さんの提案で受付席を離れ、廊下の突き当りのお手洗いへと急いだ。


「おいっ」

低く威圧的な男性の声。

突然、グイッと右肩を掴まれ、壁にへと押し付けられたかと思えば男性は、私の唇を塞いで来た。


脳内をフリーズさせながらも、私は渾身の力で男の胸板を押して突き放した。


「・・・何だ…冬也の嫁かよ」


「!!?」


惜しげに呟きながら、踵を返す。


私にキスしたのは小陽さんと拓真さんの苦手な相手・彰成様だった・・・


「ま、待ちなさいよ!!」


彰成様は立ち止まって、後ろを振り返った。


「さっきのキスは事故だ。冬也には言うなよ」


「事故って・・・彰成様は誰と間違って私にキスしたんですか?」

彰成様はきっと私と小陽さんを間違えたんだと思うけど、念の為に訊いた。


「誰でもいいだろ?それよりも便所行くんだろ?早く行けば・・・」


「私は別に・・・トイレがしたくて、お手洗いに行くんじゃありません」


「ふうん。どうでもいいけど・・・」

本家の家元なら、キチンと着物を着て身なりを整えるように思えるが、彰成様の出で立ちはGパンとラフなスタイルだった。

今日の来場者は華道関係者のみだけど、あんな格好で大丈夫なの?


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